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Vol.2「今、注目のブランデッドムービーは、なぜ視聴者の気持ちを強く動かすのか?~3名のキーパーソンが、ブランデッドムービーの魅力と未来について語る~」

エンタテインメントであり、広告でもあるブランデッドムービーとは、どうあるべきなのか?そして、この市場の隆盛のためにどんな取り組みをしていて、その先にはどんな世界が待っているのか?
クリエイティブディレクター大泉共弘とプロデューサー諏訪慶、そして、映画監督Yuki Saitoの3人が手掛けた、格安スマホNifMoのブランデッドムービー『轟満(とどろきみつる)の先入観』の事例を元に、ブランデッドムービーの新しい分析手法の紹介から、ブランデッドムービーの魅力や課題、そこに秘められた大いなる可能性について語り合いました。(前篇はこちら
 


 
【プロフィール】
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※写真左から
大泉共弘
(株式会社オプト クリエイティブディレクター/ブランデッドムービーラボ 上席研究員)

1977年生まれ。1999年に渡米し映画制作を学び、2002年に帰国後、映画制作プロダクションと広告プロダクションを経て、2014年からデジタル業界に転身。全体戦略からコミュニケーション&クリエイティブ戦略を担い数々の事例を創出。
 
Yuki Saito
(映画監督・CM監督)

1979年生まれ。Columbia College-Hollywood卒。2015年に農林水産省と制作した短編映画『しゃぶしゃぶスピリット』は、世界各国50以上の映画祭で上映され、米The Indie FEST Film Awardsにて優秀賞を受賞。2014年には、サンシャイン水族館『ペンギンナビ』がカンヌ国際広告祭「Design部門」でゴールドを受賞し、3年連続のカンヌ受賞を達成。CM監督としても国内外で高い評価を受ける。2016年には川端康成原作の『古都』で商業長編デビューを飾る。
 
諏訪慶
(ショートショート実行委員会 チーフ・プロデューサー/ブランデッドムービーラボ 主席研究員)

1977年生まれ。2005年「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を企画運営する株式会社パシフィックボイスに入社。同映画祭の拡大に貢献し、2015年1月、同社執行役員に就任。10年目を期に、代表の別所哲也と共に株式会社FROGLOUDを設立。
 
 
ブランデッドムービーの発展に向けて、なにかやられていることはありますか?
 
大泉:ブランデッドムービーにビジネス価値を生み出すために、ブランデッドムービーラボでは、様々な取り組みを行っていますが、評価手法のひとつとして取り組んでいるのが表情解析(フェイシャルコーディング)です。
表情解析を簡単に説明すると、動画視聴時の感情変化を顔の表情を分析して可視化することで、視聴データやアンケート調査では読み取れない潜在意識を読み取る調査手法です。
 
どういうシーンの時にどういう感情が生まれて、どういう行動につながったのか。表情解析を使えば、映像を観た本人も気づかないこれらの感情を、鼻のシワや眉間の動きなど微妙な表情の変化から分析することができるんです。
 
ただ、現在はCMなどの短尺では活用されているんですが、ブランデッドムービーのような長尺動画ではまだまだデータが少ない。だから、考察の仕方もオリジナルでまだまだ研究中です。
 
今回、事例としてご紹介する『轟満の先入観』は、感情分析技術・ソフトフェアを提供する米Affectiva社に協力いただき、笑顔・嫌悪・集中・驚きの4つのパターンで分析しました。
 
【BML】表情解析とは
 
『轟満の先入観』の分析結果はどうでしたか?
 
大泉:まず、プロモーションの結果としては、視聴率完了率やSNSのエンゲージメント率など、実績数値の観点からも想定を大きく上回る大成功のプロモーションでしたが、表情解析においても、それを裏付けるような結果がでました。
但し、表情解析を実施したことで、数字だけでは読み取れない感情の反応で、改善点も発見することができました。
 
例えば、冒頭に男性アシスタント役の半裸シーンがありましたが、ここでは嫌悪感が上がって集中は下がり、笑顔・驚きともに反応がないんですよね。
また、父に対して嘲笑したり、「あんなデジタル音痴にスマホなんか無理」と諦めのセリフを発するシーンでは、笑顔が上昇したものの、嫌悪も上がりました。このように嫌悪が上がったり、手中が下がったシーンに関しては、視聴離脱の疑いがあるため、特にフォーカスして反応を探り、改善点がないか注目しました。
一方で、主人公が親の思いに涙するシーンでは、笑顔が下降して嫌悪が徐々に上昇していきましたが、これはポジティブな嫌悪(感動・泣く)と判断しました。
それと、クリエイターとして興味深いなあと感じたシーンがあって、物語終盤で暗転後に笑顔の下降、驚きの低推移が見られ、集中が途切れた可能性があるんです。
 
これって、多分、音楽が原因なんですよ。終了感のある音楽が、「もう終わりだよ」って事を分からせてしまった結果かもしれないです。
 
【BML】全体サマリー
 
表情解析の結果から感情の起伏を促す演出やストーリテリングが重要な気がしますが、ブランデッドムービーの長さは、何分くらいが理想とされているんですか?
 
諏訪:この3人で製作したブランデッドムービーは、現時点で2作品あるんですけど、両方とも5分以内に収めています。作家性を活かしながら、視聴途中で離脱もされず、ブランデッドムービーや広告としてキチンと見てもらえるギリギリの時間が5分以内だと思います。
 
Saito:例えば、電車内で誰かのSNSに動画が上がってきた時に、見ようかなっていう時間が1分半くらい。5〜6分の動画だとちょっとハードルが高くなりますね。だから『轟満の先入観』は、4分59秒に収めました。
 
諏訪:5分を超えないってところは、大泉さんが断固として譲らなかった部分ですよね。
 
大泉:(笑)。視聴者が、視聴前に動画の尺を気にするケースが増えているんです。10,000円を切る9,980円じゃないですが、4分59秒は心理的なものです。
でも、時間に関しては、やっぱり葛藤はあるんですよね。一般的な動画でいえば、オンラインで一番見やすい時間だと言われているのは、1分後半から2分30秒前後なんです。相対的にみて尺は短いものの方が当然ながら最後まで見てもらえる完全視聴率は高い。でも一方で、尺が長いものを最後まで見てもらえた場合はエンゲージメント率が高いケースが多い。例えば、検索意欲であったりとか、利用意向であったりとか。
短尺化して、エンゲージメント率を維持するクリエイティブは常に模索しています。
 
【BML】ショートVSロング
 
エンタテインメントと、見たあとのアクションにつなげるための広告的な要素のバランスについて教えて下さい。
 
大泉:エンタテインメントと広告のバランスを取るのは非常に難しいんですが、3分の動画のうち、2秒しか広告要素のことを言わなかったけど、結果として利用意向や検索意欲、ブランド好意度などにつながっていけば、極論としてはいいんですよね。だから実際には尺の長さや割合の話ではなかったりするんですけど。要素としてどんな風に入っているかが重要で。
 
Saito:確かにそうですね。
 
大泉:実際『轟満の先入観』もほとんどが純粋なドラマになっていて、最後にグラフをたった5秒間だけ登場させることで、広告的な価値を見出しています。こうしたドラマと広告という2つの要素をうまく融合させて展開させるのが、ブランデッドムービーのおもしろさなんです。結果として広告主がビジネス価値としても感じられる作品をどんどんつくれば、ブランデッドムービーの価値がより明確になるということ。そうなるとクリエイター側としては、生活のために広告をつくる感覚ではなく、自分がやりたいエンタテインメントをつくるために、この分野に乗り込んでくるようになると思います。
 
【BML】終盤シーン
 
Saito:今はブランデッドムービーを撮るにあたって、決まりがないのが楽しいんです。だからこれがブランデッドムービーとはこうあるべき、みたいな感じで決まりだすと面白みが途端になくなってきちゃうので、そうならないことを願ってます。ただ、さすがになにからなにまで自由ってわけではなく、今回の『轟満の先入観』に関しては“先入観”、“思い込み”をテーマにしてつくるというお題がありました。僕的にはお題があった方が燃えますね。あとはやっぱりサプライズ的な内容をショートフィルムとしても仕掛けたいので、いかにその中に盛り込んでいくか。今回でいえば、主人公として登場する轟満っていうペンネームの漫画家が実は女性で、しかもアクション漫画を描いていたり、主人公の可愛らしい娘さんが相撲を始めたり、観ている人がびっくりする要素を入れてみました。
 
諏訪:冒頭10秒のアテンションとして、女性の声で「こんにちは、轟満です」っていうのもそれが狙いですもんね。本当は轟満って男性の名前なのに、一番最初の10秒で、あ、女性なんだって。
 
【BML】冒頭シーン(継続視聴促進)
 
Saito:テーマがあるブランデッドムービーは、ターゲットをイメージしやすいのもいいですね。よし、この人を感動させようって一人の人間を思い浮かべやすいっていうか。なので、結果として、見ている人に届きやすいものができますし、感動もしやすいと思います。やっぱり一人でも多くの人に見てもらうことを意識してつくると、単純に自分の作品として作っているよりも、共感率は高くなりますから。あと今回は広告としてつくっていることを途中で忘れちゃうくらい自由につくらせていただくことができたのも良かったです。そういう環境をつくっていただいたクライアントさんや大泉さん、諏訪さんに感謝しています。
 
大泉:根本的にみんなが思っているのは、クライアントさんを含めて楽しく仕事をしたいってことなんですよね。みんながWinになる関係性をつくれれば、仕事って楽しいし、それがすべてのモチベーションって感じだったりもするので。その理想の状態や環境を築き上げるために、じゃあ、どうしたらいいのか? ってことをブランデッドムービーラボではずっと考え、行っています。
 
Saito:実際、これまで2作品つくってみて、ブランデッドムービーって、クライアントさん自体も楽しんでいらっしゃる状況が起きやすいなあと思いました。撮影現場にクライアントさんが立ち合われた時も“いつもの仕事とはなんか違う! いいね、こういうの!”って感じられている雰囲気がすごく伝わってきました。ブランデッドムービーの場合、細部やテクニックにこだわるだけでなく、物語全体を通して言いたいことを伝えるという、もうちょっと人間の本質的な部分に訴えかけるものなので、クライアントさんにしても現場の我々に任せやすいのかなって思います。単純に撮影現場に来てお芝居を観ることが新鮮で楽しいってこともあるとは思いますが、本当にみなさんワクワクされているので、こちらもやりがいをすごく感じます。
 
大泉:この企画って、“おもしろい”とか“純粋に楽しい”、“自分がユーザーでも見ちゃうよね”って感覚を大切にしたいんですよ。個人顧客相手のビジネスであるB to Cでは、関わっている全員が発信者でありながらもカスタマーでもあって、それはクライアントさんも変わらない。個人的な意見や感想としてブランデッドムービーがおもしろいと感じていただけるから、クライアントさんにも前のめりになっていただけますし、自由にやらせていただけるようになる。
 
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Saito:ブランデッドムービーに関してよく言うのは、航海している感じっていうか、なんにもない未開の大地に地図をつくりに行っている感じですかね。で、つくり終わったときに“あ、『轟満の先入観』ってこうなりましたね”みたいな感じで、つくるたびに発見があるんです。本当は最初にゴールが見えてないとダメじゃないですか。でも、ブランデッドムービーに関しては、つくりながら発見していく、今回はこうなったねっていうところが、変な言い方ですが、許される状況っていうのがすごく楽しいんです。
 
ブランデッドムービーの今後について教えて下さい。

Saito:個人的には共感や感動、驚き、笑い、涙など感情的な目標が明確にあるようなブランデッドムービーを監督できたら嬉しいですね。あとブランデッドムービーは純粋に企画がおもしろいと思ってもらえることが多いので、それに賛同や共感をしてくれさえすれば、ほかではできないようなキャスティングが実現しやすいのも強みです。ベテランの役者さんに出演していただけるのも光栄ですし、新人を発掘して、ブランデッドムービーをきっかけにその子が有名になってくれるような状況も生み出していきたいと思います。
 
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諏訪:ブランデッドムービーって、つくりようによってはエンゲージメントをものすごく高くできる可能性のあるジャンルだと思うので、ブランデッドムービーラボによる表情解析の結果を踏まえて、さらに上を目指していきたい。またこのプラットフォームを紹介する役割を果たしているSSFF & ASIAの「Branded Shorts」ももっと成長させて、ブランデッドムービーの市場全体をさらに大きくしてきたいと思います。
 

大泉:今後というか夢なんですが、最もやりたいことはブランデッドムービーを映画産業に繋げていきたいです。
「轟満の先入観」で表現できたように、ブランドが発するメッセージって、面白い物語になると思っています。
実際に長編映画化されているブランデッドムービーも少数ですがありますし、ブランデッドムービーのマーケティング価値を向上していけば
デジタルプロモーションの延長戦で映画化ってあると思うんです。企業が価値を感じ、結果としてクリエイターの市場を創るという理想に沿って、そのためのビジネススキームも既に組んでいるところで、ブランデッドムービーに価値を感じています。
 
Saito:最後にもうひとつだけ。東京オリンピックのブランデッドムービーをつくりたい! それで世界中の人にクライアントのメッセージを我々の映像を通して伝えられたら最高ですね。
 
大泉:確かにその通り! 東京オリンピックもモチベーションのひとつとして、ブランデッドムービーの市場をさらに拡大させていきたいと思います。
 


 
【プロフィール】
大泉共弘
(株式会社オプト クリエイティブディレクター/ブランデッドムービーラボ 上席研究員)

1977年生まれ。横浜育ち。1999年に渡米し映画制作を学ぶ。2002年に帰国後、映画制作プロダクションと広告プロダクションを経て、2014年からデジタル業界に転身。「ビジネス価値のあるエンタテインメント」を念頭に、全体戦略からコミュニケーション&クリエイティブ戦略を担い数々の事例を創出。
 
Yuki Saito
(映画監督・CM監督)

1979年生まれ。千葉県出身。Columbia College-Hollywood卒。2015年、短編映画『ゴッサム ジャンブル パフェ』でショートショートフィルムフェスティバル&アジア史上初となる4度目の「観客賞」を受賞後、世界各国20以上の映画祭で上映。また、農林水産省とコラボし日本食文化をテーマに制作された短編映画『しゃぶしゃぶスピリット』は、世界各国40以上の映画祭で上映され、アメリカのThe Indie FEST Film Awardsにて優秀賞を受賞。2014年には、サンシャイン水族館『ペンギンナビ』がカンヌ国際広告祭「Design部門」でゴールドを受賞し、3年連続のカンヌ受賞を達成。CM監督としても国内外で高い評価を受ける。2016年秋には川端康成原作の小説を現代版にアレンジした映画『古都』で商業長編デビューを果たし、文部科学省特別選定映画に選出される。
 
諏訪慶
(ショートショート実行委員会 チーフ・プロデューサー/ブランデッドムービーラボ 主席研究員)

1977年生まれ、玉川大学工学部情報通信工学科を中退後、映画専門学校 ニューシネマワークショップに参加。映画の自主制作に没頭し、2000年~2001年に映画『白痴』『裸足のピクニック』のプロデューサーである古澤敏文氏の「On The Boat」プロジェクトに監督の一人として参加。南半球13カ国16帰港地を約4ヶ月間船で世界一周しながら、劇場公開用長編映画を制作・配給。2005年「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を企画運営する株式会社パシフィックボイスに入社。世界各国のショートフィルムサブライセンスビジネス、ショートフィルムの製作・プロデュース業務を統括。同映画祭の拡大に貢献し、2015年1月、同社執行役員に就任。10年目を期に、代表の別所哲也と共に株式会社FROGLOUDを設立。

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