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日韓合同のブランデッドムービーで“メイドインジャパン キットカット”の海外展開を促進~ネスレのブランデッドムービー『いつか、会える日まで』~

ブランデッドムービーは、視聴者の心を強く動かす新しい形の動画コミュニケーションの手法として注目を集めているショートフィルムだ。ネスレアミューズ内、ネスレシアターにてオリジナル作品を多数公開しているネスレ日本株式会社は、2017年10月に海外初の“メイドインジャパン キットカット”専門店を韓国ソウルにオープンするにあたり、ショートフィルム『いつか、会える日まで』を公開した。日韓それぞれで展開し、YouTubeの累計視聴回数は合計で270万回を超えている(2017年12月末時点)。
表現手法・ロケーションプレイスメントを用いて現実世界と作品世界を融合させる、新しい演出でブランド価値を表現した本作品を手掛けたネスレ日本株式会社の出牛誠氏とプロデューサー諏訪慶氏に、その制作秘話とマーケティング戦略を聞いた。
 


 
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【プロフィール】※左から、敬称略
出牛 誠(ネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部
デジタルマーケティング部 部長)
諏訪 慶(ショートショート フィルムフェスティバル & アジア チーフ・プロデューサー)
 
『いつか、会える日まで』の制作目的は何でしょうか?
 
出牛:『いつか、会える日まで』の舞台の一つは、海外初の“メイドインジャパン キットカット”専門店となる「キットカット ショコラトリー 韓国ソウル店」です。海外展開においては、お客様とのコミュニケーションも国境を越えてボーダーレスで考える必要があります。そこで、日本でも韓国でも視聴できる日韓合作のブランデッドムービーを作り、ブランド認知を高めていこうと考えました。また、日本ではすでに複数店舗を展開し、ブランド構築できていますが、韓国では初の「キットカット」専門店となるため、話題作りに寄与するように制作しました。
 
諏訪:ブランデッドムービーを作ること自体が目的になってしまうと、本来の目的であるお客様とのコミュニケーションがおろそかになります。ブランド認知を達成して、さらにはブランドロイヤリティ向上や販売につなげていかなければなりません。
そのため、『いつか、会える日まで』は作品を作って終わりではなく、オープン日に公開した上で、オープン時のPRイベントに監督にも登壇していただき、その魅力を自身の言葉で語っていただくことで、話題作りを最大化するよう意識しました。
 
出牛:日韓合作ではあるものの、日本と韓国で展開施策は異なっています。日本ではネスレシアターで多くの作品を公開しているので、その中で作品を見ていただくことを主軸に環境を整えていますが、韓国は日本よりもSNSの活用度が高いので、SNSから作品を見ていただくように導線を設計しました。
もちろんSNSで作品を最後まで見ていただくのは難しいので、ダイジェスト版をSNS広告で流すなどして注目を集めています。このように、国のデジタル事情やブランドの展開状況に合わせて施策を変えています。
 
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なぜ2部構成(前篇/後篇)になったのですか?
 
出牛:これには2つの理由があります。まず制作側の事情として、お店のオープンに合わせてブランデッドムービーを公開するため、オープン前に制作しなければなりませんでした。ただ、店舗が出来上がらなければ店内撮影はできません。そこで、店内撮影があるシーンは後篇に回して2部構成にしました。

次にマーケティングの観点から、クリスマス前の話題作りも狙いました。韓国ソウル店のオープン日は2017年10月26日。その日に前篇を公開しましたが、クリスマスには情報の鮮度が落ちています。そこで後篇を12月7日に公開することで、クリスマス前にもう一度注目を集めるよう工夫しました。コミュニケーションを点で終わらせず、線にしていく意図です。

また、ブランデッドムービーを制作する際には視聴時間が10~15分で収まるように留意しています。長すぎるとドロップが上がる傾向にあるためです。隙間時間に気軽に見られる長さで作るのがベスト。見やすさを担保するためにも、2部構成にして1本あたりの視聴時間を短く調整しています。YouTubeの視聴数は2017年12月末時点で、日本版の前篇が約190万回、後篇が約15万回。韓国版でもダイジェストを含めて65万回以上再生されています。これは期待通りの順調な数値です。
 
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『いつか、会える日まで』の企画はどのように考えたのですか?
 
諏訪:コミュニケーションのポイントは銀座の「キットカット ショコラトリー」と韓国ソウル店の両方をつなぐことでした。そこで「モキュメンタリーという、ドキュメンタリーの要素を交えたフィクションにしましょう」と提案したのです。さらに作品と現実をリンクさせて一体感を高めるために、韓国ソウル店のオープン当日に作品を公開し、主人公を“韓国ソウル店でオープン当日に働いている店員の役”にしました。これはロケーションプレイスメントという表現手法です。

これまでもネスレシアターでは「キットカット」を作品内に登場させてきました。今回は舞台そのものが「キットカット ショコラトリー」の店舗になっているので、より自然に表現できました。最初から最後まで自然とブランドの世界観を入れ込めるのもロケーションプレイスメントの大きなメリットです。
 
監督案やキャスト案はどのように決めましたか?
 
諏訪:『いつか、会える日まで』は日韓合作なので、監督も日本と韓国の共同演出にしました。日本人監督は海外制作経験が豊富でショートフィルムや企業CM制作スキルが高いたじまなおこさんに、韓国人監督はたじまなおこさんと10年以上コンビを組んでいて、ミュージックビデオなど幅広い映像制作経験があるイ・サガンさんに依頼しました。監督だけでなく撮影スタッフにも韓国人の方を起用し、日韓両方で最適な展開ができるように工夫しています。

もちろんキャストも日韓合同。ヒロイン役の奈緒さんは、演技力が高いだけでなく、以前ご一緒した撮影でも、現場ですべてを吸収しようとする姿勢も人一倍際立っていて、主人公のキャラクターにぴったりだったので迷わず起用しました。ヒーロー役のEddy of JJCCさんは、たじまなおこさんとイ・サガンさんの両監督が推した逸材で、韓国にもファンの方が多くセレブリティな層に人気が高い方だったので選びました。
 
出牛:ヒロインは韓国ソウル店の店員なので、韓国語を話せる女優の方を希望しました。韓国の方も見るムービーですから、きちんとした発音で喋れる人でなければ違和感を与えてしまいます。また、店員の言葉は韓国ソウル店の接客サービスの質が判断されるポイントでもあり、妥協はできません。奈緒さんはもともと韓国が好きで語学学校にも通っていて、韓国語が話せる方でしたから、安心してお願いできました。
 
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作品全体を通してこだわったポイントはありますか?
 
諏訪:現実と作品のつながりを強化したことです。元々、脚本の中で相手の男性役がミュージシャンの設定でしたので、実際韓国でミュージシャンとして活躍されている、Eddy of JJCCさんを起用しました。さらに登場人物の気持ちになって歌詞を作ってもらって、その曲を主題歌兼劇中歌に採用しています。Eddy of JJCCさん自身も「すっかり役に入り込んでしまった」と言っているほどです。
 
出牛:ブランドのクオリティを伝えるために、チョコレート「クーベルチュール」のシズル感にもこだわりました。クーベルチュールとは、スイーツ作りのプロフェッショナルであるパティシエが菓子作りに好んで使うチョコレート。豊かなカカオの風味や香りを味わえるクーベルチュールは、「キットカット ショコラトリー」のプレミアム感を象徴する素材です。
また、このクーベルチュールを混ぜるシーンでは、「キットカット ショコラトリー」の全面監修を手がける高木康政さんにお願いしています。最初は役者の方に指導していただいていたのですが、「やはりここは高木さんに」と言って、このシーンを担当していただきました。上質な高級感を映像で伝えるためには、やはり日本を代表するパティシエである高木さんに登場していただきたかったためです。
とろけるチョコレートのシズル感が伝えられるのはムービーならでは。丁寧に作られている様子が細部まで伝わり、テキストでは伝えきれない「キットカット ショコラトリー」のプレミアム感が表現できます。このように細部までこだわってこそ、ブランドの魅力が伝わるのだと思います。
 
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これからは、ブランデッドムービーをどのように活用すべきでしょうか。
 
出牛:人ひとりが吸収できる情報量は変わらないのに、世の中に流通する情報量が増えている現代は、広告効果を出すのが難しくなる一方です。そんな厳しい状況下で広告を機能させるためには、人が欲しくなる情報を作り、さらに信頼性を持たせる必要があります。人は一方的に垂れ流されている情報は記憶しませんが、ポジティブな気持ちで主体的に取得した情報は記憶します。また、真偽が定かでない情報には価値を見い出しませんが、正当性のある情報には価値を見い出します。
だからこそ、ネスレ公式のオウンドメディア「ネスレアミューズ」内の「ネスレシアター」で“見たくなる”情報を発信することに意味があります。また百聞は一見にしかずと言うように、視覚情報は訴えかける力も強い。これからはより動画を活用していくことが必要だと感じています。もちろん単に動画であればいいわけではなく、動画にブランドメッセージを宿して届けることが重要です。
今回のブランデッドムービーにはプレゼント選びのシーンがありますが、ギフト商品そのものを映さなくても、人がプレゼントを探している姿を映すだけで「プレゼントを買いたいな」と思った時に「キットカット」を連想するきっかけになります。商品の魅力に加えて、誰かに何かを贈りたいと思う気持ちもブランデッドムービーを通じて伝えていけたらと思います。
 
本日はありがとうございました。
 

(文:萩原かおり、撮影:杉田拡彰)

 

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