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「インフォメーション」ではなく「コミュニケーション」を求められる情報時代に必要な「コミュニケーション設計とクリエイティブジャンプ」を学ぶワークショップ

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デジタル化によって大きく変わりつつある現代の広告に欠かせないのは、「誰に」「いつ(どこで)」「なにを」「どんな気持ちに」「どうやって」の要素を考えること!
 
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情報が届きづらい時代と言われ時間が経つが、誰に なにを どうやって を訴求する広告から、「いつ(どこで)」「どんな気持ちになってもらう」の5軸を考えることがますます必要になっている。
株式会社オプトの大泉共弘氏はこれらのスキルを学ぶ「ブランディングクリエイティブワークショップ(BCW)」を開催し、クリエイターのみならず営業やマーケターにまで知識を落とし込んでいる。情報が届きづらい今の時代に生活者の共感を生み出し、メッセージを届ける思考法について聞いた。

 
 
コミュニケーションとインフォメーションって具体的になにが違うんでしょうか?
大泉:現実世界では話す相手の環境や状況を見て、言葉を選びますよね。たとえば話しかけたい人が忙しそうだったら、「今、ちょっとだけいいですか?」と言ってからコミュニケーションします。広告でも同じ「人」を相手にしているので、伝える側の環境が違っても、必要なことは一緒だと思うんです。
インフォメーションを一方的に届けるのではなく、現実世界と同様に、広告でも相手のことを考えてコミュニケーションすることが以前よりも必要になっています。
 
それに、コミュニケーションをするには、生活者の年齢や性別だけでなく「いつ(どこで)」広告を見るか、そして「どんな気持ちに」なってもらうかまでイメージした方がいいと思うんです。仕事やプライベートの日々の生活の中という広い時間帯でメッセージを届けるのか、寝る前の狭い時間でメッセージを届けるのかなどの条件によって広告で伝えるメッセージは大きく変わります。
 
ワークショップでは、コミュニケーションの原点から見直しているそうですね。
大泉:ワークショップではコミュニケーション設計の基本として、自己紹介の課題を2回に分けて出しています。
1回目は、「100文字以内で自己紹介をしてください」というシンプルなもので2回目は、誰がいつ(どこで)見るかを明確にして、同様の自己紹介を求めました。この時は、「講師を務める40代のおっさんクリエイターが仕事を終えた帰宅時の電車で拝見する」という条件を加えました。
 
1回目の課題は、自分の言いたいこと(アピール)だけ書いた自己紹介で、その人のインフォメーションですね。2回目は、「誰が」「いつ(どこで)」を明確にしているので、“40代のおっさん”“クリエイター”“仕事終わり”“電車の中”という条件を踏まえて、「どんな気持ちにさせたいか」を意識して、文章を作れるかがポイントです。
 
勘のいい人は電車の中のアイテムに自分を例えたり、冒頭に「お疲れ様です」という一言を入れたりと工夫してコミュニケーションします。このように、相手が見えない状況でのコミュニケーションがこれから必要なメッセージの届け方だと思っています。
 
実際にあった自己紹介例:
1回目の自己紹介
楽しむ天才(※仕事のみ)営業・コンサル・品管・アプリと部を転々とし、現在プランナーの5部署目。どんな部でも、どんな状況でも、目的に向かって走り続けられる、仕事上での体力お化け、仕事を楽しむ天才です。
 
2回目の自己紹介
お疲れ様です。一日が終わり、少し効きすぎた電車の暖房、涼しい季節だからこそ、少し体臭って気になりませんか。その匂い、簡単に計測できるんです。そんな研究をやっていました、実は理系女子(りけじょ)の◯◯です。
 
そこまで考えるようになったのは、広告が進化したからですか?
大泉:はい。昨今のような情報過多であらゆるメディアが多くなる前の時代では、「誰に」「なにを」「どうやって」の3要素で構成するのが多かった気がします。
しかし、デジタルテクノロジーが進化した広告ではターゲティングの精度が上がり、届ける相手を絞り込め、さらには時間帯まで絞って配信ができるようになりました。そのため従来の3要素に「いつ(どこで)」「どんな気持ちに」の2要素を加え、相手をより想定したコミュニケーションができるようになったと感じます。
 
広告の作り方が変わるんですね。
 
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(生活者の)普遍的な価値 あなた(生活者)にとっての価値

 
大泉
大勢の人に届ける広告も重要としながら、コミュニケーションをする(エンゲージメントする)広告も同じように重要になってきている時代です。
 
マスは誰にでも当てはまる普遍的な価値を伝えるため、機能やインパクト重視の表現が重宝される傾向があります。一方、緻密にターゲティングできるウェブ広告では届ける相手にとっての価値を伝え、感情に訴えかける表現が求められます。「みんなにとっての価値」を広く浅く伝えるマス型のメッセージ法と「あなたにとっての価値」を狭く深く伝えるウェブ広告のメッセージ法と共存しているのが今なんじゃないでしょうか。より限定的で深いコミュニケーションが必要なウェブ広告は、広告を見た後の気持ちを想定するようにしています。
 
こうしたコミュニケーション設計について、ワークショップではどのように学びますか?
 
大泉:「あなたにとっての価値」をどのように導き出すかを基礎から学んでいきます。コミュニケーション設計で重要なのは、情報を自分事化してもらうことです。自分事化するには「自分にとって価値のある情報だ」と感じてもらう必要があり、そのためにはインフォメーションとコミュニケーションの違いを理解しなければなりません。ただ一方的に情報を伝えるインフォメーションではなく、こちらの目的と相手の状況を詳細に把握し、その接点となるメッセージを伝えるコミュニケーションで生活者にアプローチするわけです。
 
ただし、受け取り手が「自分にとって価値のある情報」であり、同時に「受け取ってもらうことで広告主にとっても価値のある情報」にしなくては意味がないので難しいです。
 
そんな難しいスキルをワークショップで身につけることができるのですか?
 
大泉:難しいですがなんとか(笑)。
この記事では、主にコミュニケーション設計の話をしてますが、実際にはその先のクリエイティブジャンプの能力まで身につくようにしているので、相当深いことをしています。
 
卒業生からは、「すぐに実践で活用できた」「コンペ勝率が上がった」との声ももらってるので、無事スキルアップできているようです。
 
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もう少しワークショップの中身を教えてもらえますか?
 
大泉:「インフォメーションとコミュニケーション」の話は一部ですが、コミュニケーション設計とクリエイティブジャンプの導き出し方を完全にフレームワーク化しています。
そのフレームワークを、弊社で行った実案件を徹底分解して例示しながら体験してもらい、すぐに課題として実践するというものです。
 
たとえば、このラボの記事でもご紹介した損保ジャパン日本興亜様の新・海外旅行保険「off!」のプロモーションを活用しています。
 
その際のコミュニケーション設計は下記のようになっています。
 

損保ジャパン日本興亜様の新・海外旅行保険「off!」でのコミュニケーション設計
●あなたにとっての価値として●
 
誰に
海外旅行でもしもの時用に準備を備える20代女性に
いつ(どこで)
初めての海外旅行検討時に
なにを
初めての海外旅行って友達がいて楽しいよね、でも不安もたくさんあるよね
ところで、海外旅行保険とクレカ付帯は違うよ
「損保は保険で得られる結果が同じでも楽しい思い出を
提供するサポート力(プロセス)が違う」って伝えることで
どんな気持ちに
へぇ、そーなんだ。確かに!だったら海外旅行保険を検討しよう
教えてくれてありがと!という気持ちになってもらう
どうやって
視聴していて海外旅行の楽しさを「体感」できるようなリズミカルムービーで

 
 
企業が一方的に商品特徴を伝える広告ではなく、気持ちに寄り添って、生活者と企業の両方にとって価値のある情報を届けるように工夫しました。
 

 
単に海外旅行保険の特徴や価格を伝えるだけではコミュニケーションにならず、好意を持ってもらえませんよね。どうしてこのようなコミュニケーション設計になったのですか?
大泉:ワークショップでは、このコミュニケーション設計を導き出す手法をフォーマット化し身につけてもらってますが、この記事ではかなり割愛してポイントをご説明します。
 
最初に着眼したのは企業の想いです。「off!」に込められた想いは、「保険が使われないことが理想であり、楽しい旅行の思い出を楽しい思い出のまま持ち続けてくれることを願っている」。これはすごく共感できる「想い」だな、と感じました。
 
それでは、この想いをどうやって生活者の方々へコミュニケーションして届けていくか。ポイントは、今回の「誰に」にあたる20代の女性の実情です。
ほとんどの方が海外に行く際に保険に加入するんですが、「off!」のような海外旅行保険か、クレジットカードに付帯されている保険のどちらかを選んでおり、僕らが独自でリサーチした際はこの2つの保険の違いを理解しているのはわずか15%未満でした。
 
サポート対応の質が異なることが多く、結果として事故時に保証されるかもしれませんが、保険によっては病院探しや言語の壁など現地での対応に苦心するケースも多いんです。
 
そこで、「楽しい海外旅行の思い出を残すためにも、海外旅行保険とクレジットカード付帯保険の違いを教える」ことを広告のストーリーに据えました。
 
「いつ(どこで)」の要素を、“初めて”の海外旅行にした意図はなんですか?
大泉:そこが一番のポイントです。
実は、一度落とし穴にはまってしまいまして…「海外旅行でもしもの時用に準備を備える20代女性に」「海外旅行時、海外旅行事故時、海外旅行検討時に」「海外旅行保険とクレジットカード付帯保険のサポート力の違いを伝えて」「そうなんだ!だったら海外旅行保険を検討しよう」と思ってもらう、というところまでイメージしたのですが、どんなクリエイティブで表現するかがピンときませんでした。これは「いつ」に該当する「海外旅行時、海外旅行事故時、海外旅行検討時に」の範囲が広すぎて、フォーカスを当てにくかったんですね。そこで、「初めての海外旅行を検討している女性」に範囲を絞って再考しました。
 
先程の話にあったように、相手をより想定したコミュニケーションを心がけたってことですか?
大泉:はい、20代前半で初めて海外旅行に行く女性はダントツに多いです。
“初めて“に絞ると、初めての海外旅行に「楽しみと不安」を抱いており、多くは「同性の友人」と行く傾向があります。
 
「いつ(どこで)」を「楽しみと不安を感じながら友人とワイワイ旅行の計画を練っている時」と設定し、海外旅行のワクワクを体感できるようなリズミカルムービーを通して、生活者と企業の両方にとって価値のある情報を届けました。
 
リズミカルムービーにして表現するというアイデアを生み出すには、クリエイティブジャンプが求められませんか?
大泉:そうですね。ワークショップではまずコミュニケーション設計について学びますが、その後にクリエイティブジャンプについても学びます。クリエイティブジャンプについてはまた別の機会にご紹介しますが、こうしたコミュニケーション設計やクリエイティブジャンプを行うスキルはクリエイターだけでなく、マーケターや営業など全員に求められるものだと感じています。
 
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クリエイター以外は「コミュニケーション設計やクリエイティブジャンプは自分とは無縁だ」と考えている人が多いかもしれませんね。
大泉:弊社もブランディングを担当するブランド領域と、売り上げに直結する数字の部分を担当するダイレクト領域の2つに分かれていますが、「領域に関係なく、全社員がこうした考え方を身につけるべきだ」と考えてワークショップを立ち上げました。マーケターや営業もプロジェクト全体の戦略を考え、市場で狙うべきポジションを設定します。つまり、全社員が伝え手であり、表現者だと言えるのです。いくら調査データと向き合っても、生活者を見ずして効果的な訴求はできません。KGIやKPIなどの全体戦略からコミュニケーション設計やクリエイティブ運用までを一貫して統括する人材が必要でしょう。全体戦略とクリエイティブがずれてしまうと、プロセスもアウトプットもうまくいかないんです。
 
クリエイティブのアウトプット手法として、動画はどんな点が優れているのでしょうか。
大泉:動画は、最大級のコミュニケーションコンテンツの一つだと感じます。一概には言えませんが、共感を生み出しやすい(体験や想像しやすい)のは、テキストよりも画像静止画が、静止画よりも動画が強い。なぜなら、動画はビジュアル、言葉、音楽などすべての要素を入れられるマルチなコミュニケーションコンテンツだからです。ブランデッドムービーは、企業の想いと生活者の気持ちを足し算して、そこにストーリーを付加するという動画なので、生活者と企業の両方にとって価値のある最適なエンタテインメントコンテンツなんじゃないでしょうか。
ただし、重要なのは「インフォメーション」と「コミュニケーション」の違いを理解し、最適なコンテンツを創ることだと思います。

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