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暮らしの中にある小さな幸せや豊かさについて考える―。 「北欧、暮らしの道具店」によるオリジナル短編ドラマ「青葉家のテーブル」の第二話が公開中

Kurashikomu_banner
 
ECサイト「北欧、暮らしの道具店」によるオリジナル短編ドラマ「青葉家のテーブル」の第二話が、YouTubeにて配信スタートした。本作は、サイトのオリジナルブランド「KURASHI&Trips PUBLISHING」名義にて制作されたもの。4月に製作された第一話は、Youtubeの再生回数が約72万回を超えている。「KURASHI&Trips PUBLISHING」は、ユーザーの日常にひとさじの非日常届けることを使命として、リトルプレスや日用雑貨、洋服、食べものに至るまで様々なモノ作りをしている。作品に登場する小物や料理などひとつひとつが(控えめに登場するのだが)本当に素敵で、暮らしの中にある小さな幸せや豊かさを考えさせてくれる作品。
 
本作は、主人公の青葉春子と息子のリク、春子の友人・めいことその恋人ソラオの4人が織りなす同居生活を描いたちょっと複雑な青葉家の日常を描いた作品。シングルマザーの春子を演じるのは、「白い巨塔」や『図書館戦争』シリーズなど様々な作品に出演する西田尚美さん。西田さん演じる「春子」は息子のリクやめいこにお弁当を作ることを欠かさない。曲げわっぱのお弁当箱の中には、黄金比率のきんぴらごぼう、インゲンと人参の入った野菜の肉巻きが入っている。特別なおかずではないかもしれないが食べる相手を思う気持ちが存分に伝わってくる。観る人によっては、「焦ったり、無理しなくていいんだよ」そんなメッセージを感じたり、励ましになるお弁当だ。息子・リク役は寄川歌太さん、春子の友達めいこ役を『見栄を張る』の久保陽香さん、その彼氏ソラオ役を「山田太郎ものがたり」『リリイ・シュシュのすべて』の忍成修吾さんが演じる。監督を務めたのは、日本郵便のWEBCMやアーティストのMVなどを手掛ける松本壮史さん。主題歌は「サニーデイ・サービス」の「甲州街道の十二月」が起用されている。
 
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左から:クラシコム代表取締役 青木耕平さん、同取締役 佐藤友子さん、松本壮史監督、西田尚美さん、
久保陽香さん、忍成修吾さん、大水洋介さん

 
10月に行われた完成披露試写会では監督、キャストらが登壇。「続編ができたことで、皆と再会できたことがうれしい」「見ると幸せになれる。僕はまだ独り身だけどこんな家いいなと」。キャストによるコメントに加え、松本監督は、「撮影現場では今回空調部ができた。カットがかかったらエアコンのスイッチを青木代表が担当し、音声の若い子に「空調さ~ん」と呼ばれ、いい雰囲気の現場でした(笑)」と語り、作品の世界観をスタッフ全体でつくっていることが感じられた。
第二話終盤に登場する、めいことソラオがつき合うきっかけとなった短歌は本当に素晴らしく第二話の大きな見どころとなっており、ほっこりとした全体のトーン、日常を彩る素敵な雑貨、そして愛くるしい登場人物たちの世界観を、ぜひご覧になってほしい。
 


 
さて、ここからは本作のブランデッドショートの要素を見てみよう。
本作は1作目から、ブランデッドコンテンツ(ブランドや商品の訴求を目的としたコンテンツ)という意識は特に持たず、制作がスタートしたという。それでは、こうした映像を作ろうと思ったきっかけは何だったのだろうか?
 
クラシコム代表取締役、青木耕平さんにお聞きした。
 

お客様に大きな代償を払いつつ「ありがとう」を伝えたいと思っていました。小さな女の子が手書きの手紙で「お父さんありがとう」と伝えるのも尊いですが、大人になった娘たちがお金を出し合って渋谷のスクランブル交差点のデジタルサイネージで定年退職を迎えたお父さんに「今までお疲れ様でした!」と伝えることも尊いし一生忘れない思い出になると思います。なぜ後者の伝え方が思い出に残るかといえば娘たちが父親に感謝を伝えるために大きな代償を払ったという事実は大きい。なので大きな出費の伴う方法でお客様にありがとうを伝えてみたいと思い、まずはしっかり予算を使ったWEB CMのようなものを作りたいと制作会社に相談しました。相談した制作会社の人たちがとても気持ちよくセンスのいい人たちで嬉しくなってわいわい話をしてるうちに先方から「感謝を伝えたいんだったらお礼を伝えるものを作るのではなく、お客さまが喜ぶギフトになるようなものを作るのはどうか?」という提起がありそのギフトとして連続ドラマを製作することを提案されました。
もともとは1分程度の映像を作るつもりで居たので想定した予算の6倍くらいかかりそうだということになりましたが、これをつくることが今は何に繋がるかはわからないが「新しい事業領域」を切り開くR&Dになる可能性もあるのではないかといういい匂いがしたので提案に乗ることにしました。実際現在では製作している動画の位置付けを「ブランデットムービー」というよりは新しい事業の「プロダクト」だと位置付けて製作しています。

 
本作を制作したことで、ECサイトの売り上げには影響があったのだろうか?
同じく青木さんに回答いただいた。
 

1話目を公開した直後の数日は確かに日毎の予算の160%くらいの売り上げが続いたという事実がありますが、それがたまたまなのかはわかりません。もしかしたら良い映画を見た後になんとなくまっすぐ帰りたくないというような状況が起きて、サイトを回遊してくださった結果として売り上げが上がったということがあったかもしれません。2話目公開時には特に普段と変わった様子はありませんでした。ただ上記にも触れたように私たちとしては映像作品を新しく取り組む新規事業の「プロダクト」を作っているという意識で取り組んでいるのでECの売り上げが上がることは見込んで居ませんし、期待もして居ません。そもそもドラマの制作コストはいつもより売り上げが多少上がるくらいではペイしない取り組みだと思います。

 
北欧、暮らしの道具店では、お客さんとのコミュニケーションをどのように意識し、具体的にどのように実践しているのだろうか? この質問にはクラシコム取締役の佐藤友子さんにお答えいただいた。
 

「北欧、暮らしの道具店」は、「私たち」みたいな「誰か」がフィットする暮らしをつくるのを助けるためのショップでありメディアであると捉えています。「私たち」、つまり運営サイドにいる私たちと同じようなことを悩んだり感じたり考えたりする「誰か」がお客様であり読者であるからこそ、一緒に自分の暮らしに満足できるモノサシを見つけていこうよというスタンスです。ですので、お客様とのコミュニケーションについて考えるとき、何より意識しているのは「自分ならこんなときどんな声をかけてほしいか」「自分はこんなことに困っているときどんな提案をされたらうれしいだろうか」、そんなふうに「自分自身」を紐解く作業です。「自分自身」からスタートし、お客様とのコミュニケーションを設計する際のヒントにします。オリジナル短編ドラマ『青葉家のテーブル』を企画し製作に関わる際にも、ほぼこの視点でディレクションを行いました。自分ならどんな世界観の映像に親しみを覚えるだろうか?フィクションの世界だとしても、どんな言葉をかけてもらえたら今の自分のことも肯定できるだろうか?。短編ドラマの製作に限らず、商品の選定や開発、コラムや特集といった読みものの企画、お買い物をしてくださったお客様とのメールでのやりとりをはじめとした実際のコミュニケーションにおいてもすべてこの観点を大切にしています。そうすることによってあらゆるコンテンツや取り組みを通じてお客様とコミュニケーションを重ねていけばいくほどに「この人たちはなぜだか自分のことを分かってくれている気がする」「分かろうとしてくれている」という信頼や愛着となって私たちのもとに帰ってきたらうれしいなぁと考えています。

 
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左:クラシコム代表取締役 青木耕平さん 右:同取締役 佐藤友子さん

    
一方通行ではない、コミュニケーションとしての映像制作。結果的にそれがブランデッドショートとなり、ユーザーの心に浸透し、そしてサイトへの誘導、興味、購入、更には拡散へとつながっていく。
『青葉家のテーブル』はまさに、北欧、暮らしの道具店からユーザーへの映像のラブレターのようだ。
 


 
北欧、暮らしの道具店
https://hokuohkurashi.com/

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