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木を見て森を観ず?業界の新戦力となるか―ブランデッド・エンタテインメントの潜在能力

だれもが良いCM内容を求めている。あなたの注意を引くもの、不信感をにじませてあなたの気を引こうとするもの、一緒に歌いたくなる気分にさせるもの、はたまた聞き手の価値観を変えてしまうようなCM。もしくはVolvoの打ち出したCMのようにトラックを運転するハムスターを仕込んでくるか?企業に人の心をつかんで離さないノウハウがあれば、見る人の時間そして心をひきつけるだけの価値がある内容を伝えることができるだろう。そしてそのレゾナンス(反響)も大きいだろう。レゾナンス、つまりブランドイメージを伝えられたか、またはターゲットのブランドに関する認識を変えられたか、それはブランド戦略においてとても重要なものである。

 


 

課題:ブランディッド・エンタテインメントを正しく認識できているのか。

 

ブランデッド・エンタテインメントは一見多様性を含んで捉えられる。例えば、プロダクト・プレイスメント、プロダクト・インテグレーション又はブランド・インテグレーション、そしてエンタテインメントイベント及び番組を介したスポンサーシップ広告等の洗練された形式だと捉えられることもある。また、ブランド企業が作り出したコンテンツと捉え、「ブランデッド・エンタテインメント」を「ブランデッド・コンテンツ」と同義で使用することもある。

 

ブランデッド・エンタテインメントは未だ未成熟の手法である。効果を上げているにもかかわらず、2016年クリオアワード審査委員長を務めたぺレイラ&オデール(サンフランシスコ)のCCOであるPJ・ぺレイラは、2016年8月1日付けでこう語っている。ブランデッド・エンタテインメントについて、「まだ調査段階にあります。どのようになっていくか様子を見ているところであります。」

 

規律のとれている環境から、いい作品は生まれる。ブランデッド・エンタテインメントの理解と適用方法を間違えると、現行のブランド・コミュニケーションの本質的価値を損ねることがある。ターゲットに対して間違った意識を植え付け、その結果、ブランド・レゾナンスを達成するというブランデッド・エンタテインメントの潜在能力を損なうことになる。

これは業界の問題にも匹敵する。少なくとも、効果が薄いもしくは全くないコミュニケーション活動では、広告及びPRの基本原理が意味のないものになってしまうということである。

 

実現の可能性はあるのか。

 

2013年カンヌライオンズで3冠を受賞したインテル・東芝の「The Beauty Inside」というブランデッド・エンタテインメント広告を創作したジョアン・クリエイティブの共同設立者でありCOOであるジェイミー・ロビンソンはこう述べる。「聴衆は、ブランドの能力とユニーク性を感じ、そのブランドと一体感を持つようになります。一緒にドラマを作ることで、私たちに新たな創造性を持つ勇気を与えてくれた。」という感覚になるのです。

 

ここでもう一度問い直してみよう。「ブランドが完全にその独自性を打ち出すことができるのであれば、他の広告とは統合していないということになるのではないか。そこに利点はあるのであろうか。」

 

単に即購買や広告目的につながらないようなものに愛情や感情を注ぎ込みたいと聴衆は思う。このような状態ではあるが、ブランドに対しての前向きな感情を産み出しているとも言える。

 

 

 

既に述べたように、ブランド・レゾナンスとは、感情移入と聴衆体験―オーディエンス・エンゲージメント―という異なる根本的な目標の狭間にあるのである。去年のカンヌ国際広告祭で金獅子賞を受賞したコカ・コーラとドルビーのコラボレーションCM “Coke Thirst”はドルビーの音響効果を使用してコーラの爽快な弾ける音を再現し、ブランディッド・エンタテインメントの分野において解りやすい評価を得た作品となった。この作品を手掛けたJWTサンパウロのCCOであるリカルド・ヨアンはこう語る。「ブランディッド・エンタテインメントは、聴衆の感情移入、そして何より参加しているという一体感があることで、従来の広告とは一線を画しているのです。」

 

オーディエンス・エンゲージメントという考え方において、聴衆が自身で物語をコントロールすることができるという所有感、そしてブランドに注目する時間と物語に感情移入していくことができる、とロビンソンは語る。

そうなると、ブランド・レゾナンスを達成するという観点から、例えいかなる方法であったとしても、プロダクト・プレイスメント、プロダクト・インテグレーション、ブランド・インテグレーション及びスポンサーシップ広告の能力に疑問を持つのではないだろうか。研究目的で考えたとしても期待通りの能力をはたしているのであろうか。

 

我々ブランド・コミュニケーション業界の人間は必要以上に複雑にすることを好むところがある。と同時に、我々自身、ブランデッド・エンタテインメントは未だ実験的な課題であることをある程度自覚している。(とりわけ2012年のカンヌライオンズのことは記憶に新しいが)「型にはまらない」「代替手段」という考え方がなかった時には、我々が考えた通りの広告を打ち出すことができた。オーディエンス・レゾナンスも予測通りであった。

 

大前提として…

 

魅力的な物語で心酔させるブランデッド・エンタテインメントの妥当性は信憑性という力のもと効果を上げている。信憑性、信頼感、妥当性を高めることができる。ブランデッド・エンタテインメントがもたらす魅力的な物語がブランド・アイデンティティ性とモラル性という2つのテーマを高めるのである。ブランドの独自性に訴えることでブランデッド・エンタテインメントがブランドに利益をもたらす。またロビンソンは、「ブランドのテーマ」が物語にしっかりと投影されていなければ、その物語自体がブランドにとって「金の無駄」になってしまう、と示唆する。

 

マテル社のHot Wheels for Realというブランデッド・エンタテインメントで多くの受賞を果たしたミストレス・ロサンゼルスのECDであり共同設立者であるダミエン・エリーは言った。ブランデッド・エンタテインメントを打ち出す際に、彼らは、「真実に基づく物語を企画するのです。従って、我々は常に中味、つまりその商材から生まれてくる真実を見つめているのです。」

 

 

次に、ブランドとターゲットとする聴衆とのつながりを示すわずかな機会を逃さないことである。しかし、より根底から、素晴らしく精巧に作られたブランディッド・エンタテインメントは興味を引く内容でより聴衆の感情を刺激し、ロビンソンも言うように、ブランドに触れる時間を費やす価値のあるものにしているのである。

 

聴衆とのつながりというもの意識を傾け物語に組み込めば、聴衆との一体感は驚くべきものとなるであろう。「The Beauty Inside」は、物語内で毎日違う姿になる主人公の動向に大きな影響を与える活動に聴衆を参加させるというものであった。何百にも及ぶ聴衆の提案があり、期待と共に聴衆の意見を主人公の出来事として物語の中に落とし込んでいったのである。

ロビンソンはブランドに変化や挑戦をさせる機会を与え、消費者に有意義で感情移入しやすい環境を提供し、双方に共有感をもたらすことに成功したのである。

 

ブランドイメージが価値ある水準のまま「消費者と語り合おう」としているのである。主人公は、ジェンダー、人種、年齢などあらゆる姿となることができる。ブランドイメージとターゲットの聴衆が抱くイメージの間の補正を見事な手法で行っているように感じられる。

そして結果は嘘をつかない。7千万もの視聴回数、2600万もの相互交流、97%のユーチューブ承認率、インテルのブランド認知率が66%増加し、東芝のブランド認知率も40%増加、総合的に売り上げが300%増加した。これが実力だ。マーケティングとコミュニケーション広告のたまものである。目を見張るものだ。ブランドイメージが戦略的に行われているのだ。驚愕である。

 

 

一致の原則:ブランディッド・コンテンツ VS ブランディッド・エンタテインメントの構図はあるのか。

 

 

ブランデッド・エンタテインメントとブランデッド・コンテンツの区別ははっきりとついているわけではなく、同義で扱われることもある。ここで注意したいことは、ブランディッド・コンテンツはブランデッド・エンタテインメントと同じカテゴリーの中に存在していることである。とりわけ教育的コンテンツ、情報提供コンテンツ、ひいてはネイティブアド、広告主資金提供型番組コンテンツ、口コミ動画などの分野などがあげられるが、これらもブランデッド・エンタテインメントとの間で誤解混同が生じている。これらコンテンツには娯楽的要素、同一広告ターゲット、ブランド・レゾナンスに影響を与えることは必須ではないが、ブランデッド・エンタテインメントには魅力的な物語が必須条件となる。

 

 

ブランデッド・エンタテインメントはその取り組みが他のコンテンツとは異なる。ブランド広告の意思決定者はブランデッド・エンタテインメントとその他コンテンツの取り組みの違いをコンテンツの種類の違いから明確に理解しているであろう。ブランディッド・コンテンツはブランドが打ち出した番組になるのでその独自性が物語に色濃く反映されるのである。

しかしその他コンテンツは例えば情報提供コンテンツなどのように物語を作製することが必須というわけではない。ブランデッド・エンタテインメントは、広告スルーの打開策として、その方向性と改善をする時期に差し掛かっていると言えよう。魅力的な物語を作製するというその独自性と「コンテンツ・マーケティング分野における先進的存在」という面をより見せていく必要があるだろう。ロンドンのIDEO社のコンテンツ部門のリーダーであるジョニー・ローズが語っていた。

 

 

今後の展望として

 

 

ブランデッド・エンタテインメントの潜在能力を最大限に引き出すには、ブランドが主導で概念化、そして創作をするいわゆるゼロベースから関わっていくという役割を果たさなければならない。広告業界においてブランド主導のショーケース、つまりブランド発信のメディアもしくは動画というジャンルを確立することが必要となる。

 

ブランドは他の娯楽エンタテインメントと異なるように、他の物語構成とは一線を画しているということである。目玉となるブランドとして確立、聴衆とのつながりを強化する場合、ブランデッド・エンタテインメントを補助的な二次的広告として使用したいと考えるブランドがあってもいいだろう。コカ・コーラ、ドルビーのブランデッド・エンタテインメントはブランド認識力が大いに発揮された稀なケースと言えよう。ドルビーの能力を惜しみなく発揮し、人気ブランドのコラボレーションの要素を最大限に引き出したものである。

 

 

ブランド信頼性、物語の支配力に加えて、ブランデッド・エンタテインメントを使用していないブランドと比較して対消費者のブランド・レゾナンス達成において大いなる潜在能力を秘めている。例えば、スポーツの試合の中のハーフタイムショーも、ブランドの独自性を完璧に把握できるよう使用されることがある。しかしながら、このような事例は、物語から生み出されるブランドの独自性を打ち出すとても稀なケースであると言える。

 

いずれにせよ、ブランデッド・エンタテインメントはブランド・レゾナンスを達成させる魅力的な物語という広告能力を持ち合わせている。そしてターゲットとなる聴衆へ究極のエンタテインメントとして提供することができる。これは紛れもない事実である。

 

 

出典元:Marklives
Branded Entertainment – the wood for the trees
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