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第1回ブランデッドムービー研究会レポート Vol.4~今後の可能性、課題、活用方法など

Vol.4サマリー】
久保田教授から各社の発表についてまとめがあった。第1に、リマインド効果もあるブランデッドムービーは、短期的なマーケティングにも効果的である。第2に、エンゲージを高めるには「自己表現」と「パートナー」の2つの次元をうまく組み合わせて作品を制作することが重要である。
松田氏からは、ブランデッドムービーの特徴を検証した実験結果から、「ブランデッドムービーには多くの情報を伝え、感情を強く揺さぶる力があることがわかった」との説明があった。合わせてブランデッドムービー活用と評価方法について、「短中期」と「中長期」の2つの視点で説明があった。
大泉氏からは、「NifMo」のブランデッドムービー制作のプロセスを題材に、「①コミュニケーション設計」「②目的達成できるコンテンツの創り方」「③KPIの考え方」について説明があった。①では、ブランドの強みを要素分解した上でターゲットの関心事と組み合わせることの重要性が、②では継続視聴やエンターテインメントと広告のつなぎ方、クリエイターのディレクションについて説明があった。③では、「マイクロコンバージョン」を調べることでわかったこと、またブランデッドムービーがダイレクトマーケティングに与える影響について説明があった。

 


 

青山学院大学 経営学部マーケティング学科 教授 久保田進彦氏

 

リマインド効果があるブランデッドムービーは、
短期的なマーケティングにも効果的

ブランデッドムービーを店頭で流すというパナソニックの事例が印象に残った。なぜなら、私自身「ブランデッドムービーはパソコンで見るもの」という思い込みがあったからである。FMCG(日用消費財)の場合、リマインド効果をねらいTVCMが活用される場合があるが、テレビよりも店頭で流した方がリマインド効果が高いと考えられる。コールマンジャパンの石垣氏から、「ブランデッドムービーの効果で顧客が店舗に足を運んでも、別な会社の商品を買ってしまう」との指摘があったが、店頭でブランデッドムービーを流せば、リマインドと同時にエグゼンプラー効果(顔が見える人が意見を言う方が強い印象が残る)も期待できる。つまり、ブランデッドムービーによって短期的な効果も期待できるのだ。ブランデッドムービーには長期的なマーケティングに向くというイメージがあるが、使い方次第では短期と長期の両方に効果が期待できるのである。

各社のブランデッドムービーを見て、エンゲージを高める上で2つのキーワードがあると感じた。一つは「自己表現」である。ブランドの個性やフィロソフィーが、視聴者自身のそれと重なるため、視聴者から見ると、「自分を表現してくれている」と感じる場合である。もうひとつが「パートナー」である。「このブランドは、自分のことをわかってくれている」という感覚である。ただし、「表現」or「パートナー」ではない点に注意すべきだ。ある作品に、両方が含まれている場合もある。「表現」と「パートナー」の2つの次元を上手に組み合わせながらブランデッドムービーを制作することで、確実にエンゲージメントを高めていけるのだ。  

Branded Movie Lab 主席研究員 松田清(株式会社オプト)

 

ブランデッドムービーのマーケティング活用に向けて

 

ブランデッドムービーの特徴は多くの情報を伝え、感情を強く揺さぶること

ブランデッドムービーは、映像によるストーリーテリングで視聴者の気持ちを動かすもので、そのために次の要素が求められる。

1.生活者にとってコンテンツが魅力、価値を持つ

2.生活者との繋がりを生むブランドのメッセージがある

松田P1_ブランデッドムービーの定義_修正 1に映像には多くの情報をストーリーの形で伝えられる特性がある上に、視聴者の感情を強く揺さぶるために記憶に残るからだ。第2がインターネットの普及である。テレビのターゲットは不特定多数であるため、クリエイティブも最大公約数的なものになる。一方WEB上では、特定のターゲットに映像を届けることが可能になり、ターゲットに寄り添う表現が可能になった。
実際に、ブランデッドムービーには、本当に多くの情報を伝え、感情を強く揺さぶる力があるのだろうか? タカラトミー様?が制作したブランデッドムービー、人生ゲーム「人生に驚きと歓びを」篇を使って実験を行った。ムービーを見た人の表情を「表情解析」した結果と、TVCMの過去のノーム値(平均値)を比較。その結果、ブランデッドムービーの「注目顔」「笑顔」「思案顔」等の各表情スコアが、TVCMより高いことがわかった。つまりブランデッドムービーの方が、注目度が高く、笑顔を増やし、考えさせる力があるのだ。
実験では表情解析以外に、アンケート調査も行った。結果、TVCMよりもブランデッドムービーの方が「ストーリーが楽しめる」「インパクトがある」「興味がわく」「共感できる」の数値が高かった。その結果、TVCMよりもブランデッドムービーの方が「好意度」と「記憶に残る」が高い結果に繋がった。特に「好意度」は3倍以上になっている。
これらの結果から、ブランデッドムービーは多くの情報をストーリーで伝え、強く感情をゆさぶり記憶に残ることが実証された。つまり、ブランデッドムービーは、エンゲージメントを高める上で効果的なコミュニケーションツールだと考えられるだろう。
 

ブランデッドムービー活用と評価方法(短中期)

最近、TVCMで幅広い層に認知を広めると同時に、サイトの訪問を促し商材の理解を深め購買につなげるという戦略が効きづらくなっている。理由の一つは、消費者が「自分には関係ない」と判断してしまうことだ。この問題の解決に、ブランデッドムービーは効果的だ。ブランデッドムービーには共感を高め、気づきを促す効果がある。その結果「自分ごと化」をはかり、商品に興味を持ってWEBサイトへ訪問してもらうことが期待できるのだ。
では、ブランデッドムービーを活用した場合、効果の検証をどのように行えばよいだろう? 第1は、視聴による態度変容効果の可視化である。たとえばブランドへの好意度や利用意向をアンケート調査した場合、広告接触ログによって調査対象者を自社広告の「接触者」と「非接触者」の2群に分類し、接触者と非接触者で比較できる。第2は、視聴による行動変容の可視化だ。具体的には、広告露出数と商品名による検索数の関係、その商品に関するキーワードがプロモーション前後でどう変化したかを調査することで確認できる。第3は、ブランド・商品の口コミ波及分析である。具体的には、ツイートや口コミの量と内容を性年代・職業別・地域別に分析する、また拡散に貢献したユーザーの順位・相関を分析する方法もある。松田P3_<短中期>ブランデッドムービーによる気づきの提供  

ブランデッドムービー活用と評価方法(中長期)

中長期的なブランディングにおいて期待できる効果として、ファンの創出・育成がある。ファン創出・育成には一貫したあらゆるブランド体験が必要となるが、共感を呼び、強く感情を揺さぶる力があるブランデッドムービーは、重要な1つのブランド接点と言える。ファンの創出・育成の効果評価としては、顧客がブランドに抱く心理的な結びつきを可視化していく。具体的には「ブランドを認知」「ブランドイメージに好意をもつ」「ブランドとの絆ができる」という3つの段階だ。この顧客とブランドとの関係性を測定する指標を創りだし確認することで、「ファン」の創出・育成をできているかを確認していく。
どんな経験を経て好意をもつようになったのか、どんな経験を経て絆が生まれたのか、その顧客の心理変容のプロセスの中でブランデッドムービーが果たした役割を明確にすることが可能になる。

松田P4_<中長期>ファンの創出・育成  


 

Branded Movie Lab 上席研究員 大泉共弘(株式会社オプト)

 

コミュニケーション設計とKPIの考え方

 

ターゲットは30~40代の主婦層で、目的は利用意欲の向上

通常のブランディングで設定する認知度や好意度の向上といった目的よりも高いハードルにチャレンジした取組みで、次アクションにつながる深いエンゲージメントと深い共感による口コミ拡散を狙った。完成したブランデッドムービー「轟満の先入観」は、「もっと知りたい」からサイトへいく、というクリック率が平均の4倍、誰かに伝えたいというシェア率は平均の3倍など優れた実績となった。
また動画を最後まで視聴することによって深いブランド理解を促す視聴完了率は平均の8倍、更に結果として商品を利用したくなる生活者も増加し、増加率を図る″商品利用意向の上昇率*”だと66%という驚く数字が出た。ブランデッドムービーの肝となるコミュニケーション設計の基本は、ブランドメッセージとユーザーの興味関心事をマージさせる事。 大泉P1_ブランデッドムービーの定義(再掲)_修正 しかし、どのタイミングでメッセージと関心ごとをマージさせるのか?
先ずは、ブランドの強みを要素分解した上で、ターゲットの関心事と組み合わせる。 大泉P2_コミュニケーション設計_修正   しかし、一見マージできそうな要素が生活者にとっては魅力とならない。大泉P3_コミュニケーション設計2   何故か、ここで生活者のインサイトの深堀を行う。 大泉P4_グラフ   すると、格安スマホに対する「サポートが悪い」「つながりにくい」「通信速度が遅い」などのネガティブなイメージがあることがわかった。 そこで「格安スマホに対して思い込みをしていませんか?」というメッセージを、ターゲットの普遍的な関心事と関連づけることを重視し「大切な家族に対して思い込みをしていませんか?」とメッセージしてから、「格安スマホに対してもそうです」と伝えることにした。  

実際の制作段階では3つの工夫をした。
① 継続視聴に繋がる冒頭5秒のクリエイティブ ポイント:動画を見ることで視聴者自信にとってどんなメリットがあるのかを感じられるように設定
② 「広告だけど」の共感を得るクリエイティブ ポイント:物語で生む意外性と、広告要素で生む意外性を連動し、視聴者に共感してもらってから広告メッセージを促した。
③ クリエイターのディレクション ポイント:クリエイターにテーマを伝える際、明確であると同時に余白を設けて話した。制作プロセスでは、マーケティング課題を解決できているか、エンターテインメントと広告のバランスがとれて、マーケティング課題を解決できているクリエイティブになっているかをチェックした。

 

Brand to Directの視点

次に、ブランデッドムービーが、もともと実施していたダイレクトマーケティングにどれだけのインパクトを与えたかについて調査した結果を見ていきたい。
結果としては、前述したように無関心層だったターゲットの利用意向が66%上昇。
つまり、無関心層から顕在層へと変化したことになる。限られていた顕在層の市場を広げることに成功し、ブランデッドムービーでコミュニケーションしたターゲットとは、今度はダイレクトマーケティングの対象となる。
今回の施策では、動画視聴者やサイト来訪者に対してダイレクトバナーでリターゲティングを行った。すると、バナーをクリックする率となるCTRが既存の顕在層に比べ2倍以上となった。つまりブランデッドムービーによって、従来よりも成果が見込めるリストが獲得できることがわかった。

ブランディングのためには継続的なコミュニケーションが必要だと言われるが、今のところ、どのぐらい継続すればよいかの指標がない。たとえば上記の実験において、継続的にコミュニケーションを取った場合に、CTRがどう変化するかなどの研究を、今後行っていく必要があると考えている。

 

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